「365日前」
この日、いつものように仕事を終え、お夕飯を済ませ
深夜11時頃に日課となっていた「深夜散歩」に出掛けました。
車だと2~3分程度、だらだら歩いて20分程度のコンビニが折り返し地点。
彼とたわいもない話をしながら目的地に向かって歩いていました。
コンビニに到着した私の耳に入って来たのは子猫の鳴き声。
お母さんを探しているような、そんな鳴き声でした。
鳴き声のする方へ歩いて行くと白くて小さな頭が。
ただ近付くとすぐに引っ込んでしまいます。
コンビニで会話を楽しんでいたカップルに声を掛けたところ、
かれこれ1時間位前からコンビニで話しているけどずっと鳴き声がしてるから
心配で、連れて帰りたいけれどすぐ引っ込んじゃうし先住猫がいるから連れて帰る事も出来
ず、ひとまず様子を伺っているとの事。
「他の兄弟猫の姿はありましたか?」
「親猫の姿は見ましたか?」
と質問しましたがどちらも「ノー」
気になりながらも買い物を済ませ、再び来た道を戻るも
子猫の事が気になって気になって。
自宅に戻り、洗濯ネットと鞄を肩に再び車でコンビニへ。
相変わらず狭い隙間に居る子猫を鞄を使って隙間から出し
細い溝を逃げ回るのを追いかけましたが、お腹が空いていたのでしょう。
すぐにペタンと座りこんでしまいました。
その隙に片手でひょいと抱き上げたのが「わけにゃん」です。
私は5年ほど前まで「蘭丸」と言う名前の猫と一緒に生活しておりました。
彼は私が初めて一緒に生活した猫であり、今でも自慢の息子なのですが
初めての猫飼いだったこと、12歳と言う若さで腎不全で虹の橋を渡ってしまった事を
とても悔しく思っていたのです。
彼が永遠の眠りにつき、新しい姿(つまり魂)に生まれ変わるその日
ずっとずっと話しかけていた事があります。
それは
「いつか必ずオカーサンの所に迷わず帰って来てね。
その時は私のこの手で抱き上げるから」
彼が旅だった翌年、東日本大震災が起きました。
更にその翌年から福島で被災動物の写真を撮り始めました。
当然現場には子猫もたくさん居ました。
また知人からの応援要請で子猫保護にも立ち会いました。
けど私が抱き上げた子はこの中には居ませんでした。
そして365日前の今日
ついに私の手で抱き上げた小さな命。
抱き上げる直前に
「もしこの子を抱き上げる事が出来たらきっと蘭丸が約束守ってくれたって事だよね」と。
そしてこの手で抱き上げて、最初に出てきた言葉が
「・・・おかえり。」でした。
久し振りの育児と言う事もあり、1kg超えるまでは突発死もありうるから
本当に大変でした。
ささいな事でも動物病院へ通い、懸命に治療しました。
そして間もなく1kgを迎えようとしたある日。
夢の中に、旅立ってから1度も会えなかった蘭丸が出て来てくれたのです。
「オカーサン、僕約束守ったよ。もう大丈夫だよ」
もちろん喋った訳ではありませんが、ただ静かにそこに佇む蘭丸が
そんな風にメッセージを送ってくれたような気がしました。
365日前は380gと小さな子猫。
今では5kg程度の立派な体になり
若猫らしいしなやかで強靭な筋肉を持つ、心優しい青年猫になりました。
わけにゃんの、もう1つのバースデーストーリーです。
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